嗜好性薬物の世界

構造活性相関

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デザイナーズドラッグの開発に不可欠な、「化合物のどの部分がどう変われば、作用はどう変わるか」という情報についての知見を集めていきます。

  • フェネチルアミンのα位にメチル基がつくと、作用持続時間がかなり長くなる
    • これはモノアミン酸化酵素の作用を受けにくくなるからである。例えばフェネチルアミンはすぐに分解されるが、アンフェタミンは分解されにくく、半減期は10時間程度である。ただしイソプレナリンのようにα位に炭素鎖がなくてもMAOの作用を受けにくい物質も存在する。
  • アンフェタミンの4位に塩素以上のハロゲンが付くと、セロトニン神経毒性が強くなる
    • 例えば4-クロロアンフェタミンや4-ブロモアンフェタミンはかなりセロトニン神経毒性が強い。なお、4-ヨードアンフェタミンはさらに神経毒性が強いという情報(『薬物乱用・中毒百科』)もある一方で、ハロゲン原子がヨウ素である場合は、あまり毒性は強くないという話もある。
    • ただし、これはセロトニン放出剤の場合であり、セロトニン再取り込み阻害剤の場合でもこれが当てはまるかは不明である(疑問ノート参照)。
  • アンフェタミンの4位にフッ素原子が付いた場合、セロトニン神経毒性は生じない
    • この理由は、フッ素原子のサイズが小さく、水素とあまり変わらないためか、あるいはフッ素-炭素結合が強力で外れにくいためのどちらかだろう。
  • 脂溶性が高い物質ほど、血液脳関門を通過しやすい
    • ただし、脳がエネルギーとして使用するブドウ糖など、一部に例外もある。中枢作用を高めたければ、化合物の脂溶性を高めなければならない。
    • ただし、創薬の指針とされている「リピンスキーのルール」では、logPが5以下が望ましいとしている(これは医薬品全般についてであり、中枢を主対象にする薬品でも当てはまるかは不明)。
  • 化合物に水酸基が付くと、脂溶性が大幅に下がる
    • 例えばエフェドリンとメタンフェタミンの差は水酸基があるかないかだけだが、脳関門通過性には著しい差がある。
  • 化合物にケト基が付くと、脂溶性が多少下がる
    • ケト基のないアンフェタミン類よりもケト基のあるカチノン類の方が効力が低いのはこのためである。
  • アンフェタミンの窒素原子にアルキル基が付くと脂溶性が上がる
    • メタンフェタミンの方がアンフェタミンよりも覚醒作用が強いのは、メチル基があるために脳関門通過性が高いからである。
    • 同様に、炭素数が多いほど脂溶性が高まるため、α位が長かったり、ピロリジン基があったりする化合物は脂溶性が高い。
  • 化合物にハロゲンが付くと、脂溶性が上がる
    • 例えばフルオロアンフェタミンはアンフェタミンよりも脂溶性が高いため、中枢作用が強い。
  • メタンフェタミンのメチル基が伸びていくと、ドーパミン作用が落ちていく
    • エチランフェタミン、プロパンフェタミンと、アルキル基の炭素数が多くなるに連れて、ドーパミン作用は減っていく。MDMAとMDEAについても同様である。
  • 単純な構造のアンフェタミン類にメチレンジオキシ基が付くと、セロトニン作用が高まる
    • 典型的にはMDMAなど。一方でドーパミン作用はかなり低下する。
  • 嵩高いアンフェタミン類にメチレンジオキシ基が付いても、全くセロトニン作用が高まらない場合がある
    • MDPVはドーパミン作用こそ強いが、セロトニン作用はほとんどない。α-PVPのような嵩高い化合物にメチレンジオキシ基がつくと、MDMAの場合とは逆にドーパミン作用が高まる。
  • MDMA類のβ位にケト基が付くと、セロトニン作用が落ちる
    • メチロンは、ドーパミン作用はMDMAとほぼ同じだが、セロトニン作用は3分の1である。
  • アンフェタミン類のα位を伸ばすと、ドーパミン放出能力が落ちる
    • アンフェタミンのようなドーパミン放出剤は、α位が長くなると放出作用が格段に落ちるようである。MBDBはセロトニン作用は強いがドーパミン作用がない。
  • ピロバレロン類のα位を縮めると、ドーパミン再取り込み阻害能力が落ちる
    • ピロバレロン類のような再取り込み阻害剤は、α位がプロピル基である場合が最も活性が高いようである。なお、α位をさらに伸ばした場合、活性は少しずつ落ちていくようである。
    • また、ブプロピオンは再取り込み阻害剤であるが、これのα位を伸ばすと、ドーパミン活性が高くなる。
  • フェネチルアミン類のβ位に水酸基があると、ドーパミン作用が下がる
    • ドーパミンやメタンフェタミン(どちらもβ位に水酸基がない)は、ドーパミン作用とノルアドレナリン作用が同じ程度だが、ノルアドレナリンやエフェドリン(どちらもβ位に水酸基がある)は、ノルアドレナリン作用は強いが、ドーパミン作用は弱い。
    • 一方、β位がケト基の場合は、さほどドーパミン活性は下がらないようである(逆に再取り込み阻害剤の場合は上がると思われる)。
  • MDPVのケト基を外すとドーパミン再取り込み阻害能力が格段に落ちる
    • この種の再取り込み阻害剤はケト基が付いていた方が活性が高いようで、ケト基がなくてそこそこ知られている物としてはプロリンタンくらいしかない。
  • ドーパミン再取り込み阻害剤のベンゼン環にフッ素が付くと、作用が弱くなる傾向にある
    • 断定はできないが、ドーパミン放出剤と比べて、フッ素が付くことによる活性減弱作用は大きいようだ。
  • ピロバレロン類のピロリジン基(炭素数4)をピペリジン基(炭素数5)に変えると作用がかなり落ちる
    • 一部でこういったアナログがあったようだが、あまり見かけないのは作用が弱いからだろう。
  • ベンゼン環はチオフェン環でも代用できるが、多くの場合活性がかなり落ちる
    • メチオプロパミンは、メタンフェタミンのベンゼン環をチオフェン環に変えたものだが、そこそこの作用はある。α-PVTも同様にα-PVPのアナログだが、多少弱まるものの十分な活性はあった。ただしブプロピオンのベンゼン環をチオフェン環に変えると、論文上の数値ではドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンの再取り込み阻害作用がほとんどなくなる。

脂溶性データ

データはTOXNET内のChemIDplusによるもので、logPowである。

  • d-アンフェタミン(フリーベース)
    • 1.76
  • アンフェタミン(フリーベース、ラセミ体)
    • 1.76
  • 硫酸d-アンフェタミン
    • 6.81
    • ↑この数値は高すぎるようにも思われる。誤記ではないだろうか?
  • d-メタンフェタミン(フリーベース)
    • 2.07
  • エチランフェタミン(フリーベース)
    • 2.71
  • プロリンタン(フリーベース)
    • 4.28
  • 3,4-メチレンジオキシアンフェタミン(フリーベース)
    • 1.64
  • 4-メトキシアンフェタミン(フリーベース)
    • 1.77
  • 塩酸l-エフェドリン
    • -2.45
  • dl-メチルエフェドリン(フリーベース)
    • 1.7
  • l-エフェドリン(フリーベース)
    • 1.13
  • d-プソイドエフェドリン(フリーベース)
    • 0.89
  • ドーパミン(フリーベース)
    • -0.98
  • l-ノルアドレナリン(フリーベース)
    • -1.24
  • カフェイン
    • -0.07
  • コカイン(フリーベース)
    • 2.3
  • 塩酸コカイン
    • 0.1
  • メチルフェニデート(フリーベース)
    • 0.2
  • デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール
    • 7.6

活性

数値はEC50(50%効果濃度)またはIC50(50%阻害濃度)を表し、単位はnMである。数値が低いほど活性が強い。数値には資料によって差があるため、同じ物質が複数掲載されている場合がある。測定方法により、大幅に数値が変わる場合もあるため、異なる論文間での2種類の物質の数値を比較しても、不正確な比較となる場合も多い。単にMDMAと書かれているのはほぼ間違いなく3,4-MDMAである。筆者は英語を読めないため、本文を読まずに数値のみを抜粋して掲載しているため、不適切な情報が混じっている可能性がある。

物質名ドーパミン放出ノルアドレナリン放出セロトニン放出
(+)-アンフェタミン257.11765
d-アンフェタミン87.21756
(+)-メタンフェタミン2412736
(-)-メタンフェタミン416294640
メタンフェタミン8.51291
(+)-MDMA14211070.8
(-)-MDMA3682564337
3,4-MDMA51.249.6
2-フルオロアンフェタミン
3-フルオロアンフェタミン24.216.11937
4-フルオロアンフェタミン51.528939
4-メチルアンフェタミン44.122.253.4
メフェドロン49.1118.3
メチロン133242.1
(-)-エフェドリン135072.4ほとんどなし
GBR-129094230
GBR-129353047
物質名ドーパミン
取り込み阻害
ノルアドレナリン
取り込み阻害
セロトニン
取り込み阻害
3,4-MDPV4.1263349
3,4-MDPV4.42556
アンフェタミン93673418
コカイン211292313
メフェドロン762487422
メフェドロン765416
メチロン123210311017
メチロン1684668
α-PVP
(O-2387)
52.356ほとんどなし
4F-α-PVP
(O-2370)
185171ほとんどなし
(R/S)-ピロバレロン
(O-2371)
5228.32780
4Br-α-PVP
(O-2419)
39.5831050
4I-α-PVP
(O-2493)
3246.5197
3I-α-PVP
(O-2495)
52811070
ナフィロン2013633
4-メチルチオアンフェタミン4880102
ブプロピオン6581850ほとんどなし
ペンチロン13009908400

下記についてはIC50ではなくKi値(阻害定数)である。Ki値とIC50の違いについては筆者の知識不足ゆえ解説は控える。

物質名ドーパミン
取り込み阻害
ノルアドレナリン
取り込み阻害
セロトニン
取り込み阻害
(-)-エフェドリン4398225ほとんどなし
メチルフェニデート60100132430
ブプロピオン2401700
コカイン230480740

情報源 (右のボタンで開きます)

http://books.google.co.jp/books?id=SJfXMp9X4rUC&pg=PA122&lpg=PA122&dq=EC50+methamphetamine&source=bl&ots=i0E3dL9tId&sig=cXzk9jqvprMZIUCyMJMHB53geGc&hl=ja&sa=X&ei=PZo4VNaAFJL08QW-34KgBw&ved=0CCkQ6AEwAQ#v=onepage&q=EC50%20methamphetamine&f=false

http://potentchems.com/index.php/3-fa.html

http://www.politicheantidroga.it/media/605148/3.3_fenetilammine_a.pdf

http://books.google.co.jp/books?id=8psTrw4GokAC&pg=PA172&lpg=PA172&dq=EC50++da+5-ht++2-FLUOROAMPHETAMINE+nm&source=bl&ots=zcWdyLFZdM&sig=rY5cpGiR3s5UCppymvBdQC1j7eY&hl=ja&sa=X&ei=4xk6VK6jC8r18QXY14HYBA&ved=0CDMQ6AEwAg#v=onepage&q=EC50%20%20da%205-ht%20%202-FLUOROAMPHETAMINE%20nm&f=false

http://www.neurophys.wisc.edu/~cozzi/Designer%20methcathinone%20analogs%20target%20dopamine%20and%20serotonin%20transporters%20in%20rat%20brain.pdf

http://www.readcube.com/articles/10.1038/npp.2012.204(この資料では、放出能力が低いはずのMDPVのEC50の値がかなり高くなっており、その理由はよく分からない)

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2602954/pdf/nihms63137.pdf

http://bioreagent.bertinpharma.com/product-14202.aspx

http://bioreagent.bertinpharma.com/product-22058.aspx#Forensic-regulated/4-MTA-%28hydrochloride%29

http://www.maps.org/publications/2001_rothman_1.pdf(この資料は、放出能力の単位としてIC50と書いてあるが、いくつかの物質のIC50が他の資料のEC50と一致しているため、これはEC50とみなして掲載した)

http://www.nist.gov/oles/upload/9-HuestisNISTWorkshop_DesignerDrugsPharmacol4-30-13mahFinal.pdf

http://ir.jikei.ac.jp/bitstream/10328/5628/1/125-1-1.pdf

http://onlinelibrary.wiley.com/store/10.1111/j.1742-7843.2012.00926.x/asset/bcpt926.pdf?v=1&t=i38j5p8i&s=8cc75fc3a02879e5a51b5b3b5090293674562d3f

https://ewsd.wiv-isp.be/Publications%20on%20new%20psychoactive%20substances/Mephedrone/Carroll2010_bupropion-analogues.pdf

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2768949/pdf/aasm.32.11.1425.pdf

http://www.smw.ch/content/smw-2015-14043/

血漿タンパク結合率

  • ブプロピオン
    • 84%
  • シブトラミン
    • 97%

情報源 (右のボタンで開きます)

http://www.rxlist.com/wellbutrin-drug/clinical-pharmacology.htm http://www.rxlist.com/meridia-drug/clinical-pharmacology.htm

危険な構造

覚醒剤・エンタクトゲンにはフェニルエチルアミン構造が多いが、炭素鎖を一つ伸ばしてフェニルプロピルアミン構造になると、オピオイドの作用を持つ場合がある。オピオイドは、わずかに構造が変わっただけで作用が大きく増強されることがあるので、開発時には中毒に注意を要する。

エピバチジン エピバチジン(英文記事)は、LD50が0.2mg/kgという猛毒であるが、構造図を見るとフェネチルアミン骨格であり、覚醒剤と似ている。

ジメトキシメタンのような、O-C-O構造を持つ物は、酸の作用によってホルムアルデヒドを発生する場合がある。なお、メチレンジオキシフェニル基のように、両側の酸素が二つともベンゼン環に直結している場合は、おそらく大丈夫だろう。

2-フルオロエチルアミン構造や、4-フルオロブチルアミン構造は、フルオロ酢酸に代謝されるので、猛毒である。

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